旧102の表示指定成分

70年代に化粧品被害が相次いだ後、ついに旧厚生省が動き出しました。

1980年、旧厚生省は102種類の化粧品成分についてアレルギーの危険性を認め『表示指定成分』としました。当時は化粧品の成分を表記する義務はなかったのですが、『表示指定成分』については必ずパッケージや容器に明記して、買う人に知らせるように義務づけられたのです。

この102種類の『表示指定成分』のほとんどは、石油から合成された合成成分であり、数多くの合成界面活性剤、タール系色素、合成防腐剤が含まれています。

『表示指定成分』の中でも要注意なのは、合成防腐剤のパラベンです。パラベンはアレルギー性だけではなく環境ホルモンの疑いも出てきました。パラベンは、多くのメーカーが化粧品の保存期間を伸ばすために使っている、ごく一般的な防腐剤です

また、2001年から、化粧品は全成分表示を義務づけられ、そのために『旧表示指定成分』といわれるようになりました。問題なのは、アレルギーを起こす危険性のあるこれらの成分が、ほかの成分にまぎれてわかりにくくなってしまったことです。

危険なのは、これらの『旧表示指定成分』だけではありません。化粧品の成分は、約2500種類、香料を含めると7500種類以上になり、『旧表示指定成分』以外にも危ない合成成分は数多くあります。

たとえば合成防腐剤のフェノキシエタノールは、『表示指定成分』の中には入らなかったがために、無添加化粧品ではよく使われています。しかしフェノキシエタノールの毒性はパラベンとほぼ同じといわれ、また同じく環境ホルモンになるという疑いが出ています。『旧表示指定成分』に入らなかったけれど、アレルギー性が疑われている成分は数多くあります。

無添加、自然派化粧品、オーガニックコスメの違いについて

実際に肌トラブルに悩む女性が増えるにつれて、あらたに注目されるようになったのが無添加化粧品や自然派化粧品です。合成成分の化粧品に問題が出てくる可能性があるなら、それよりは昔から使われてきた自然のものを使いたいというのは当然のなりゆきでしょう。

しかし成分を見ると、無添加、自然派といいながら、肌にとって危険な合成成分にほんの少しだけ植物エキスを混ぜただけという化粧品が多いのも現状です。

ところで「無添加化粧品と自然派化粧品の違いは?」という質問をよく聞きます。

無添加化粧品というと、合成成分がまったく入っていないかのような印象を受けますが、そうではありません。無添加化粧品とは厳密にいうと、旧厚生省が指定したアレルギーの危険性のある化粧成分を抜いた製品を指します。それらの成分は102種類あり、その中には、防腐剤のパラベンなども含まれていたのです。しかし102の『表示指定成分』以外にも肌トラブルを起こしやすい合成成分は数多くあります。その一例がフェノキシエタノール。『表示指定成分』には入っていなかったので、無添加化粧品によく使われている合成防腐剤で石油由来成分です。そのほかにも「表示指定成分」には入っていない数多くの石油由来成分があります。ですから、無添加イコール安心というわけではないのです。

いっぽう自然派化粧品は、植物エキスを抽出した成分を多く使った化粧品ということになりますが、これもパンフレットの言葉だけではなくラベルをしっかり見てチェックする必要があります。自然のエキスはほんの少しで、ほかの成分はいろいろと不安な化学物質になっているという製品も多いからです。

コスメの全成分表示について

長い間、化粧品は、「企業秘密」の尊重のため、全成分を表示する義務がありませんでした。しかし「成分が定かでないものを肌に塗ることの不安は大きい」という使う人の声に応えて、まず欧米で全成分表示が義務づけられました。その後、ようやく日本でも2001年4月から化粧品の全成分表示が義務づけられるようになりました。

しかし化粧品が全成分表示になったとき、新たな問題も出てきました。というのは、それまで義務づけられていた『表示指定成分』が入り混じってほかの成分も同じように並んで表記されることによって、危険成分が見えなくなってしまったからです。

とはいえ化粧品の成分が「企業秘密」で隠されていたことを思えば、全成分表示は、情報開示という点では評価されるべきでしょう。

ところでUVケアやフェイスクリームなどで「医薬部外品」という表示をよく目にします。「医薬部外品」は「薬用化粧品」という表示がされていることもあります。

「医薬部外品」とはいかにも肌に良さそうです。しかし、その意味は「薬効成分が入っているが量は少ないので、効果や副作用も穏やか」という、医薬品と化粧品の間にある商品ということです。

「医薬部外品」には全成分表示の義務がありません。「クスリより弱い」ために、薬局でしか販売できない医薬品よりも規則がゆるく、しかし「化粧品に使えない強い成分も成分表示なしで使える」というものです。「強い成分」というと、素肌にとって効果の高い成分が入っていると勘違いしがちですが、そうとは限りません。

危険性の高い化粧品も、「医薬部外品」として承認されてしまえば、全成分表示をする必要がなくなるので、ユーザーは注意が必要です。

現在、厚生労働省では、今後はこの「医薬部外品」についても全成分表示をしていくことが検討されています。