コスメも「脱石油」宣言

アルテ

気候変動を止めるために、ついに世界は、石油燃料を止め、「脱炭素化」社会に向かって動き出しました。

実は、石油から作られるコスメもまた、環境汚染と気候変動の原因になります。

そんな今だからこそ、日本オーガニックコスメ協会は、改めてコスメの「脱石油」宣言をします。

化粧品の原料は石油

意外にも未だに知らない人も多いのですが、現代化粧品の主要成分は石油です。

スキンケアからメイク用品、そしてシャンプーに至るまで、水以外は、ほぼ石油由来合成成分というのが、現代の一般的な化粧品です。

石油で作られた化粧品が普及したのはほんの90年前からのことで、それは人類史上、かつてなかった異変と言っていいでしょう。

何千年もの間、化粧品は、植物や鉱石などの自然素材から作られてきました。

では、いったい何故、石油が現代化粧品の主役になってしまったのでしょうか?

石油燃料時代が始まった

現代社会において、大量の石油が使われるようになった始まりは、アメリカのペンシルベニア州でのこと。ここは「石油産業発祥の地」として知られていますが、1859年、世界で初めて機械堀りによる石油の大量採掘をしました。

当初、石油はオイルランプに使う灯り用として需要があったのですが、やがてトーマス・エジソンが電球を発明(1879年)したため、石油の使い道は無くなったかに思われました。

しかし間もなくドイツでガソリン車が実用化され、新たに車の燃料としての石油の需要が広がったのです。以後、石油燃料は世界中に普及していくとともに、石油会社は国際的な大企業へと発展しました。

石油が様々な分野で使われるようになった

石油産業が盛んになってくるとともに、燃料以外の石油の使い道も研究されるようになりました。石油を燃料にする過程で、「ナフサ」という余剰生産物が出てきます。効率的な利益を求める石油会社は「ナフサ」を様々な分野で使うことを目指しました。

その結果、「ナフサ」から作られた合成成分は、農薬、医薬品、洗剤、プラスチック製品、合成繊維、合成塗料などなど。つまり私たちの生活周りのありとあらゆるものが、石油由来の合成成分で作られるようになってしまったのです。

そしてまた化粧品もまた原料として石油が使われるようになったのです。

アメリカで作られた石油原料のメイク用品

世界で初めて化粧品が石油で作られたのは、アメリカの映画産業のメッカ、ハリウッドでのこと。美容アドバイザーとして活躍していたマックス・ファクターは、最初は俳優のために石油由来原料を使ったメイク用品を作りました。

当時、メイクをすることは一般女性からは敬遠されており、それは芸能人や花柳界の女性専用のものでした。マックス・ファクターは、一般女性を対象としたメイク用品を販売することを思いつき、その製品化に乗り出しました。その結果、出来上がったのが「パンケーキ」でした。「パンケーキ」は、またたく間に全米の女性に普及し、さらに世界中に広がっていったのです。

石油がもたらした環境汚染と気候変動

石油原料は価格も安く、規格化された大量生産には、たいへん適していました。石油化学は、現代社会に素晴らしい豊かさを与えてくれたように思われました。

しかしやがて石油製品を使い続けることによって様々な問題が露わになってきました。

アメリカで普及した「パンケーキ」は、まもなく深刻な肌トラブルが社会問題となって浮上しました。女性だけがかかる素肌の病気として「女子顔面黒皮病」がアメリカ中に広がりましたが、その問題は海を越え、パンケーキ」が普及した日本でも1970年代に大手化粧品メーカーを相手どった訴訟が起こされました。

石油の合成成分が引き起こした問題は、メイクに限らず、あらゆる分野で見られるようになりました。

農薬、洗剤、塗料などの石油の合成成分は、自然界では循環することができないため、土壌、水、大気に及ぶ環境汚染を引き起こすことが明らかになってきたのです。近年、アレルギーやアトピー症、さらに以前にはそれほど多くなかった疾患が慢性化していますが、それは環境汚染によって起きた体内汚染が関わっています。また年々、すさまじいスピードで動植物の種が絶滅へと追いやられています。

さらに最近では、海のプラスチックゴミ問題が深刻化を増しています。その結果として、年々、魚類などが減少し続けています。

全面的に石油を使わないという選択

そして今、もはや国際社会が目をそらすことが出来なくなっているのが温暖化による気候変動です。化石燃料である石油は、燃料や製品として使えば使うほど、二酸化炭素を放出し続け、その増大によって、年々、地球環境の気温があがり続けるのです。温暖化は、猛暑、大雨、大雪、極度の乾燥による山火事、ハリケーンなどの異常気象となって、私たちの生活を脅かすまでになっています。

1997年に開催された京都温暖化会議以来、世界は二酸化炭素を減らす「低炭素化」社会をテーマにしてきました。しかしそれでは間に合わないのでは?

そしてついに今、化石燃料である石油を使うことを全面的に止めようという動きが出てきました。ヨーロッパでは、この10年以内にガソリン車を廃止する「脱炭素化社会」、そして「脱原子力」を目指しています。

日用品もコスメも「脱石油」宣言を

今、私たちの生活周りにあふれている石油由来製品を見直すことが求められています。今後は、自然界で循環し、地球環境に負担をかけないモノ作りを目指す必要があります。

これまで日本オーガニックコスメ協会は、化粧品の合成成分は、様々な肌トラブルと「経皮毒」による病気の原因になるうることを伝え続けてきました。

さらに気候変動の激化を考えると、もはや石油を私たちの周りの日用品やそして化粧品に使う意味がありません。

そんな今、日本オーガニックコスメ協会は、改めてコスメの「脱石油」宣言をします。

2017年、日本オーガニックコスメ協会は、石油由来原料の全面的な使用禁止を条件としたJOCAマークを作りました。まさにJOCAマークは、コスメの「脱石油」を促進する道標なのです。

一人でも多くの消費者が、出来る限り石油由来の製品やコスメを購入しないことによって、
企業もまたモノ作りを見直さざるを得なくなります。

完全に石油フリーの、真のオーガニックコスメを使うことは、自身の素肌と健康を守るだけではなく、気候変動を止めることにも貢献できるのです。