ご存知ですか? 「オーガニックコスメ」の言葉は日本が最初に使用したことを!
協力:日本オーガニックコスメ協会 TEXT : ATSUKO TAMURA COMPOSITION : MINORU IKEDA

「オーガニック・コスメ 上手な素肌の守り方」(双葉社) 2001年に刊行された。おそらく公の場でオーガニックコスメという言葉が初めてこの本の中で使われた。環境NGOアイシスガイアネットの編集チームが生み出した造語だ。


ナチュラルコスメの先進国ドイツのスーパーでは、ビオ製品と一緒に数多くのオーガニックコスメが販売されている。
オーガニックコスメの歴史
オーガニックコスメの歴史をみると、それは古代世界から始まりました。まだ農薬もなく石油成分由来の合成成分もなかった少し前の時代まで続いていました。日本オーガニックコスメ協会の水上洋子さんが変遷を説明してくださいました。 「長い間、世界各地の人々が身近な植物やクレイを使ってスキンケア品を手作りし、健康な素肌を保つために使ってきました。とくに古代エジプトではアイシャドー、チーク、ルージュ、香水など現代の化粧品の元となるアイテムがほとんど使われており、考古学博 物館に展示されています。実際、現代のオーガニックコスメには世界各地の伝統的な植物療法の知識が活用されています」 2002年からフランスの認証団体エコサートがコスメの認証を始めましたが、このときもまだ「オーガニックコスメ」の認証ではなく、コスメの「オーガニック」認証という ものでした。その後、2008年になって新たに化粧品認証団体「ネイトゥルー」が設立され、この頃からヨーロッパではオーガニックコスメという言葉が一般的に普及していきました。オーガニックコスメの基準はあるのか
「有機食品の世界統一基準はありますが、オーガニックコスメの統一基準は世界でもまだありません。そのため、メーカーが独自にオーガニックコスメとうたって宣伝できる現状です」と水上さん。 日本でもいくつかの認証団体が各々の基準で化粧品の認証を始めているが、一般的に認知されているわけでもなく、他に規制力もありません。したがって取得するだけの価値があると受けとめられていないのが現状です。一方で海外のオーガニックコスメやナチュラルコスメについて信頼できる統一基準があるかといえば、やはり基準は各団体で異なる状況が続いています。ヨーロッパには、イギリスの「英国土壌協会」、フランスの「エ コサート」、イタリアの「イチュア」、ドイツの「デメター」など有名な民間団体があります。これらはもともとオーガニック食品(農産物、加工食品)の認証をしてきて、コス メ認証は後のことです。そのため基準が団体によって異なるのです。ちなみに有機食品に世界統一基準を作ったのはドイツのボン市に本部をおく国際NGOの「IFOAM国際有機農業運動連盟」です。 コスメの場合、乳化剤や持続性が高い防腐剤などが求められます。どの成分を「使用可」にするかの判断によって、各団体の基準が異なってきます。その結果、ヨーロッパではオーガニックコスメの統一基準を作ろうという 動きが出てきました。2010年に世界統一のコスメ基準作りを目指して新たな認証団体「コスモス」が設立されました。参加したのはBDIH、エコサート、英国土壌協会、イチュア、コスメビオの有名な5つの認証団体です。 「コスモス」は2017年1月1日より5団体が共通した基準でコスメ基準を実施していくとしています。 ヨーロッパのオーガニックコスメ認証を取得した化粧品でも石油系の合成成分が使われていることがよくあるのも事実です。日本の消費者の多くがヨーロッパは認証基準が厳しく、石油成分はすべて使用禁止と考えていますが、そうではありません。「コスモス」認証においても合成防腐剤や合成界面活性剤などいくつかの石油系合成成分が使用可とされています。例えば「安息香酸とその塩類」、「ソルビン酸とその塩類」、「サリチル 酸とその塩類」、「ベンジルアルコール」、「デヒドロ酢酸」などです。これらは防腐剤や殺菌剤として用いられる合成成分です。そうした使用について、「コスメの世界統一認証基準は、今後、オーガニック&ナチュラルコスメの製造方法に与える影響が大きいだけに石油系合成成分の『使用可』については不安が残ります。もともとオーガニック&ナチュラルコスメは人体にとって安全性が高く、環境にも負担をかけない持続可能な製品だからこそ消費者から大きく支持され、期待されてきました。消費者のオーガニックコスメやナチュラルコスメへのさらなる信 頼を高め、また製造者の安全な製品作りを奨励していくためにも、ノン石油系合成成分、自然界に循環できる天然成分を基本としたコスメ認証基準作りをしていくべき」と「日本オーガニックコスメ協会」は考えています。 コスモス認証基準で使用可とされている、石油系合成成分の例 ※旧表示指定成分とは、日本の旧厚 生省がアレルギー性の怖れがあるとして、表示義務を定めた成分です。安息香酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
サルチル酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
ソルビン酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
デヒドロ酢酸およびその塩類 | 殺菌剤 旧表示指定成分 |
ベンジルアルコール 殺菌剤 | 旧表示指定成分 |