「ヌーヴェルエステティック(日本版)82号」に、日本オーガニックコスメ協会の取材記事が掲載されました。
ヌーヴェルエステティック(日本版)82号
テーマは、「オーガニックコスメの歴史と現状・認証制度」(6ページ構成)。
最新のオーガニックコスメ情報がわかります。
掲載原稿
ヌーヴェルエステティック(日本版)82号 16p~21p
協力:日本オーガニックコスメ協会
TEXT : ATSUKO TAMURA COMPOSITION : MINORU IKEDA
「オーガニック・コスメ 上手な素肌の守り方」(双葉社)
2001年に刊行された。おそらく公の場でオーガニックコスメという言葉が初めてこの本の中で使われた。環境NGOアイシスガイアネットの編集チームが生み出した造語だ。
ナチュラルコスメの先進国ドイツのスーパーでは、ビオ製品と一緒に数多くのオーガニックコスメが販売されている。
オーガニックコスメの歴史をみると、それは古代世界から始まりました。まだ農薬もなく石油成分由来の合成成分もなかった少し前の時代まで続いていました。日本オーガニックコスメ協会の水上洋子さんが変遷を説明してくださいました。
「長い間、世界各地の人々が身近な植物やクレイを使ってスキンケア品を手作りし、健康な素肌を保つために使ってきました。とくに古代エジプトではアイシャドー、チーク、ルージュ、香水など現代の化粧品の元となるアイテムがほとんど使われており、考古学博
物館に展示されています。実際、現代のオーガニックコスメには世界各地の伝統的な植物療法の知識が活用されています」
2002年からフランスの認証団体エコサートがコスメの認証を始めましたが、このときもまだ「オーガニックコスメ」の認証ではなく、コスメの「オーガニック」認証という
ものでした。その後、2008年になって新たに化粧品認証団体「ネイトゥルー」が設立され、この頃からヨーロッパではオーガニックコスメという言葉が一般的に普及していきました。
「有機食品の世界統一基準はありますが、オーガニックコスメの統一基準は世界でもまだありません。そのため、メーカーが独自にオーガニックコスメとうたって宣伝できる現状です」と水上さん。
日本でもいくつかの認証団体が各々の基準で化粧品の認証を始めているが、一般的に認知されているわけでもなく、他に規制力もありません。したがって取得するだけの価値があると受けとめられていないのが現状です。一方で海外のオーガニックコスメやナチュラルコスメについて信頼できる統一基準があるかといえば、やはり基準は各団体で異なる状況が続いています。ヨーロッパには、イギリスの「英国土壌協会」、フランスの「エ
コサート」、イタリアの「イチュア」、ドイツの「デメター」など有名な民間団体があります。これらはもともとオーガニック食品(農産物、加工食品)の認証をしてきて、コス
メ認証は後のことです。そのため基準が団体によって異なるのです。ちなみに有機食品に世界統一基準を作ったのはドイツのボン市に本部をおく国際NGOの「IFOAM国際有機農業運動連盟」です。
コスメの場合、乳化剤や持続性が高い防腐剤などが求められます。どの成分を「使用可」にするかの判断によって、各団体の基準が異なってきます。その結果、ヨーロッパではオーガニックコスメの統一基準を作ろうという
動きが出てきました。2010年に世界統一のコスメ基準作りを目指して新たな認証団体「コスモス」が設立されました。参加したのはBDIH、エコサート、英国土壌協会、イチュア、コスメビオの有名な5つの認証団体です。
「コスモス」は2017年1月1日より5団体が共通した基準でコスメ基準を実施していくとしています。
ヨーロッパのオーガニックコスメ認証を取得した化粧品でも石油系の合成成分が使われていることがよくあるのも事実です。日本の消費者の多くがヨーロッパは認証基準が厳しく、石油成分はすべて使用禁止と考えていますが、そうではありません。「コスモス」認証においても合成防腐剤や合成界面活性剤などいくつかの石油系合成成分が使用可とされています。例えば「安息香酸とその塩類」、「ソルビン酸とその塩類」、「サリチル
酸とその塩類」、「ベンジルアルコール」、「デヒドロ酢酸」などです。これらは防腐剤や殺菌剤として用いられる合成成分です。そうした使用について、「コスメの世界統一認証基準は、今後、オーガニック&ナチュラルコスメの製造方法に与える影響が大きいだけに石油系合成成分の『使用可』については不安が残ります。もともとオーガニック&ナチュラルコスメは人体にとって安全性が高く、環境にも負担をかけない持続可能な製品だからこそ消費者から大きく支持され、期待されてきました。消費者のオーガニックコスメやナチュラルコスメへのさらなる信
頼を高め、また製造者の安全な製品作りを奨励していくためにも、ノン石油系合成成分、自然界に循環できる天然成分を基本としたコスメ認証基準作りをしていくべき」と「日本オーガニックコスメ協会」は考えています。
コスモス認証基準で使用可とされている、石油系合成成分の例
※旧表示指定成分とは、日本の旧厚
生省がアレルギー性の怖れがあるとして、表示義務を定めた成分です。
安息香酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
サルチル酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
ソルビン酸およびその塩類 | 防腐剤 旧表示指定成分 |
デヒドロ酢酸およびその塩類 | 殺菌剤 旧表示指定成分 |
ベンジルアルコール 殺菌剤 | 旧表示指定成分 |
いろいろと合成成分が入り混じったオーガニックコスメが多いので、ここでは「本物のオーガニックコスメ」とケミカルコスメの違いを水上さんに説明していただきました。
「ケミカルコスメは石油由来の合成成分が多用されています。合成界面活性剤、合成防腐剤、合成溶剤、合成色素、合成香料などで石油を燃料にする過程で出てくる副産物から誘導された合成成分です。実際、水以外はすべて石油由来成分というケミカルコスメも少
なくありません。一方、オーガニックコスメは石油原料の合成成分は基本的に素肌にとって望ましくないという考えが根底にあります。そのためオーガニックコスメは美容植物を化粧品原料の基本としています。防腐方法についても植物や植物由来のものが使われています。ケミカルコスメがパラベンやフェノキシエタノールなど石油系合成成分の防腐剤を使用していますが、オーガニックコスメは抗酸化力が高い植物由来成分によって保存性
を高めています。いくつかの天然成分の防腐剤を挙げると、ローズマリーエキストラクト、レウコノストック/ダイコン根発酵液、オリーブ葉エキス、カンゾウ根エキス、グ
レープシードエキストラクト、その他抗菌力があるエッセンシャルオイル類などが使われています。色素や香料についてもケミカルコスメが合成香料や合成色素を使うのに対して、植物から抽出したエッセンシャルオイルをブレンドしたものを使います」
石油原料の合成成分には抗酸化力を期待することはできず、むしろ肌を酸化させてしまう方へ働くのは明白です。植物の場合は必ず抗酸化力をもっており、合成成分が混ざっていない本物のオーガニックコスメは肌本来の機能を守る免疫力や生命力(=輝き)を高める力を持っています。
現在、日本メーカーの製品の一部が外国の「エコサート」、「BDIH」、「USDAオーガニック」、「英国土壌協会」などの有名な認証マークを取得しています。ほとんどの認証団体は2つの基準を定めており、ナチュラル
コスメ基準とオーガニックコスメ基準です。
前者の基準は化粧品に配合されている植物がオーガニックかどうかを問いませんが、後者はオーガニック植物の割合が決められています。
コスメ認証の取得方法や手順は各団体によって異なりますが、基本的には製品についての詳細情報を記した書類審査があり、それはかなりの量になり、作成にも時間を要します。書類審査の他に必要があれば製造現場の検証も行われます。さらに認証マークの取得は1年毎と定めている認証団体も多く、そのため認証取得費用がかなりかかります。結果としてオーガニックコスメ製品の価格も上がることに繋がります。そうしたリスクがあっても消費者の信頼を得るために認証マークを取得するメーカーが増えています。オーガニックコスメの発展には難しい側面もありますが、日本オーガニック協会が新たに推奨品マークを作り、認証費用が製品普及を阻害することなく、普及していくことを目指しています。
「オーガニックコスメの場合、原料がどこの国でどのように栽培され、どのように生産加工されたのかというトレーサビリティ(生産から製造、流通まで)が問われます。例えば、バラエキスは生産地がブルガリア産なのかトルコ産なのか、有機栽培か否か、加工は誰がどのようにしたのかといった詳細が求められます。毎年の認証取得に要する時間と費用に対する批判を改善するために協会が新たに推奨品マークを作りました。リスクにならない方法を目指したものです。協会としてはコスメ認証の世界統一基準を急ぐよりも議論を重ね、消費者にも分かりやすいものにしていく必要があると考えています」と水上さんはその意図を説明します。
現在、日本のオーガニックコスメには石油系合成成分を一切使わずに製造されている製品が数多くあります。2013年に日本オーガニックコスメ協会監修のもとに発行された単行本「オーガニックコスメ」では石油系合成成分を一切使用していない300以上の製品がスキンケアからメイク用品にいたるすべてのアイテムが掲
載されています。そうした化粧品製造は日本では現実的なものになっています。まさに天然成分100%で化粧品を作るということにおいて、世界の最先端をいっているといえるでしょう。化粧品の成分についてはこれま
で人類が使ったことのない新成分が毎年、登場しているという現状があり、それらの成分が自然界や人体に問題なく循環できるものであるかどうかを見分けるには長い時間を要するでしょう。
最後に「オーガニックコスメを使う消費者は成分を読み取るために勉強をしている人が多く、一般消費者のようにデザインや雰囲気で化粧品を購入することはありません。そのため、メーカーは合成成分が混じっていない本物のオーガニックコスメ製品を作ることに最大限の努力を注ぎ、ブランドの信頼を高めることができます。ヘアケア、スキンケア、メイクまで丸ごと天然成分100%の製品を使えるのが日本の現状です」と日本からオーガニックコスメという言葉が誕生した誇りを水上さんの言葉に感じます。